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米下院と上院はウクライナ支援法案を可決した。一部を借款にすることや、岸田文雄首相の米議会での演説が引用されたことなどが話題になっている。
こうした記事について筆者は21日、X(旧ツイッター)で «これはキッシー訪米のおかげ。無償援助から融資に代えたからと説明されている(米→ウへの融資)が、その融資を最終的には日本が肩代わりするから、アメリカの実質負担なしになるというロジック»と投稿した。
それに対して、«支援額の一部が融資(借款)に切り替えたとの記載は投稿者が引用している記事にありますが、「日本が肩代わりする」との記載は投稿者の仮説に過ぎず、その根拠は示されていません。参考までに他の情報源も掲載しておきますので、あわせてご確認ください»と、産経新聞とNHK報道を参考とするコミュニティノート(利用者による注釈)が付けられた。
ただし、双方ともに支援額の一部が融資に切り替えられたという事実を書いているだけで、筆者もその程度の事実を把握した上で投稿した。このコミュニティノートは、筆者の意見を間違いと指摘するわけでもなく、何が言いたいのかさっぱり分からない。
日本がウクライナに支援を行うことは、岸田首相の訪米時にも表明されている。この支援は主に融資で、軍事支援にはならず、非軍事分野であろう。
米下院では、岸田首相の訪米後に、これまで通らなかったウクライナ支援法案が急に進みだした。
もちろん筆者の推測であるが、岸田首相の訪米時におけるウクライナ支援の表明とは無関係ではないだろう。
米国において、日本が他国への支援の話を行うのは、米国の議会人に対する何らかの意図を持っているとみるのが自然だ。
そこで、筆者は、日本のウクライナ支援と今回の米下院でのウクライナ支援法案との関係を合理的に推測しただけだ。全くの邪推であるが、今回のウクライナ法案の米下院における根回しにおいて、「融資にするが日本が最終的には持つだろう」くらいの話が出ても不思議ではない。
もし仮に、米国のウクライナへの融資期間が日本のそれより短ければ、意図はどうあれ、結果として「肩代わり」の効果になる。
国際社会では、支援を互いに押し付け合い、それぞれの国が国益を得ようとしている。そうした場合、無償援助から融資に代えて「いいとこ取り」をするのもそれほど珍しくない。
Xのコミュニティノートを書いた人は、結果として肩代わりになるような国際社会のシビアな争いを知らず、推測も働かなかったのだろうか。
筆者であれば、今回の米下院のウクライナ支援法案の可決は、「日本がカギを握っていた」と強調するだろう。そして、「日本は民主主義を守るために相当の役割を果たした」とアピールしたいくらいだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)