「またやったのか?」
夕日に赤く染まった教室に入ると、窓際にいたカズキが聞いてきた。アタシの顔がひどいのを見て、何も言わなくてもわかったらしい。アタシはただ黙ってコクンと頷いた。
「お前、学習してないんだな。」
カズキが完全に呆れ顔で言う。アタシは睨みつけることしかできない。
「そんな顔すんなよ。事実だろ?」
その通りだから何も言えないんじゃない。そう思いながらうつむく。
「マユミ。お前、本当はどうしたいわけ?」
ちょっとイラついたようなカズキの声・・・。
「・・・アイツと同じだ。」
「え?何?声小さくてわかんねぇ。」
アタシの呟きにカズキは眉をひそめてる。
「・・・カズキもアイツと同じこと、言うんだね。」
顔をあげてまっすぐカズキを見ながら言う。まるで自分のじゃないみたいに冷たい声がアタシの口から出ていく。
「・・・ごめん。お前だって辛いよな。」
バツの悪そうな顔をしてアタシから視線を外すカズキ。
「やさしいなぁ、カズキは。」
アハハっていう乾いた笑いが口から漏れた。カズキの優しさはアタシにはもったいないくらいだ。
「アタシは支配してくれる人がいないとダメなの。一人じゃ、何もできないグズなの。だから、優しくされるより、厳しくしてほしいんだけどな・・・。」
「・・・マユミ。それは恋愛じゃないって前にも言ったよな。」
カズキが難しい顔して言う。ホント、優しいなぁ。心配ですって顔に書いてある。
「アタシ、恋愛向いてないよ。だって難しいんだもん。」
ぷくーってほっぺを膨らませながら言う。ちょっとわざとらしいけど、今にも泣きそうな心は隠せた・・・はず。
「でも、したいんだろ?恋愛。」
困ったように言うカズキ。さっきより眉間のしわが深くなってる。
「うん。でも、わかんない。どんなに尽くしても、みんなアタシから離れてく。この人ならって思っても・・・相手が・・・ちょっとずつ・・・ひっく・・・遠く・・・なっちゃう・・・。」
話してたら、涙があふれてきてしまった。今までこらえていたのが、自分の言葉で決壊してしまったらしい。結局、アタシは弱いってこと。
「マユミ・・・。お前、何度それを繰り返してきた?俺は前回と今回しか知らないが、お前のしていることが不毛なことぐらいすぐにわかったぞ?」
憐れむようなカズキの声がアタシの心に突き刺さる。
「・・・えっく。カズキぃ・・・。アタシ、どーしたらいいのぉ・・・?」
ひどかった顔がさらにぐしゃぐしゃになっていく。カズキはそんなアタシに優しく微笑みかけてくれた。
「なぁ。俺と付き合わねぇか?」
優しい笑顔で、ちょっぴり恥ずかしそうに言うカズキ。アタシはその言葉にただきょとんとするしかなかった。
「何だよ?俺じゃ、嫌か?」
ふてくされたように言うカズキの顔はほんのり赤かった。
「・・・だって、カズキは女の子でしょ?」
呆然とアタシは呟く。
「お前は、体的には男なんだから問題ねぇだろ?」
苦笑しながら言うカズキは夕日に照らされて何だかとっても綺麗だった。
「・・・で?どーなんだよ。俺じゃ不満か?」
少し不安そうにしているセーラー服の少女の細い体を壊さないようにギュッと抱きしめる。アタシの腕の中にすっぽりおさまる彼女の体から大きな鼓動が伝わってきた。
***************************************************
久しぶりにSSです。以前に辻川様の企画で書かせて頂いた時のボツ案を、若干の加筆・修正したものです。ちなみにその時ボツにした理由は、テーマとずれるからと、今回はカットした後半部分がちょっとダブついた感じで、気に入らなかったから、でした。
これ、書き始めは普通の男女の話だったのですが、途中から何というか、遊び心?みたいな感じで逆転カップルになりました←
一応、彼らの名前は決めてあって、木村和姫と真弓利彦と言います。ちなみに二人とも美人さんな設定です(笑)
さて、ここまで読んでいただきありがとうございます。最近、めっきりサボりっぱなしな坂本ですが、書くことは続けていくつもりですので、気が向いたらまた来てやってください(笑)
P.S.今度また辻川様の企画「終末恋愛」に参加させていただくことになりました!今回は締め切りありということなので、落とさないように頑張ります!