実に不公平な話だ、と
すれ違ったカップルに向けて思い切り舌打ちしてやった。
どうして世の男と女は一度そういう関係になると手を繋いだり人前でハグしたりしたがるのだろうか。
別に、ひがみとかねたみとかそういうのじゃなくて純粋にそう思う訳ですよ、あたしは!
まあ手を繋ぐくらいなら心の容量がそんなにないあたしでも許せる。今はね。
昔みたくわざわざ手を繋いでる仲睦まじいカップルの間をわざわざ「天誅!」なんて言って歩くなんてことはしない。今はね。
だけど問題はその先!
人前でハグとかチューとかね、もうね、お前ら、しかるべきところでやれよと声を大にして言いたい。
今は回るベッドはないらしいけど、そういうところなら何でもいくらでも出来るじゃん!
なんちゃらわいせつ法で捕まることもないし、好き勝手出来る。
いいじゃんそれが経済の活性化に繋がるかもしれないじゃんっつーか頼むからそういうホテルに行ってくれなけなしの小遣いで300円くらいカンパするから、
ああ、どうせあたしの右手は今日の3時間目の体育のソフトボールで豪快にスライディングしたせいでぐっちゃぐちゃの土まみれになったジャージ上下と、あたしの青春の汗を吸った汗だくのTシャツがこれまたぐっちゃぐちゃに詰まった体育用の鞄で塞がってますよーっだ!
無機物だから相手の温もりもない!
重くて指が痛い!
あたしみたく誰かに怖い目で見られることもない!
なんて平和で幸せなのかしら!
羨ましいだろ!と、つい叫びたくなった。
「どあほう」
ボソッと呟いたのはあたしの右側を歩いている流川楓だった。
何がどあほうなのよ!って言ったら返答の代わりにため息をつかれた。
相変わらずヤなやつ!
大体あたし達、付き合って何年!?もう0.5年なんだよ!?(いわゆる半年)
なのに手も繋いでないってどーいうことですか!
今時健全な男子ならとっととその先の世界を見てるんじゃないの!?つーか見てるだろ!
なのになんで貴方は何もしてこようとしないのかしら、なんて、最大の疑問符
ムシャクシャしたから、このバカ!って憎しみをこめて言ったら、あたしの右手から強引に体育用の鞄を奪い、自転車のハンドルにそれを引っ掛けると今度は空いたあたしの右手をぎゅっと握り締めた。
ひやり、と、あたしの体温に比例しない掌の温もりがあたしの掌を包ん、で
『 っ、ひゃああぁう!!?』
気が付けばすっとんきょうな声をあげていたあたしをチラリと横目で見て、またはあとため息をつく。
なんだなんだ何が起こってるんだ今あたしはどうなっているんだここはどこで今なにを、
「…手、繋ぎたいなら、最初から言え」
そう言った君の横顔と、そう言われたあたしの表情
楓はそう言うと、ふいとそっぽを向いてしまった。
(あれ、楓、もしかして照れてる?)(うは、なんか、こっちまで恥ずかしくなってきた!)
【素直になれない男の子と女の子のシチュエーションがたまらなくすきなんですいません!】