母さんに頼まれて、父さんと駅前まで買い物に行った。
内容は、別にかわり映えのもの。ただ、なんでかはわかんないけど人通りが多くて時間がかかった。
「あら、お久しぶりです」
そう言って後ろから声をかけて来たのは、知らないオカマさん二人組。
父さんの知り合いかな、と思って横を見れば、なんか嫌そうな顔。
それでも(変なところで気が弱いから)彼ら…彼女、ら?が経営しているというバーに案内された。
「面白いわよ」
そう言われて、バーの中にある一つの扉を父さんと一緒にくぐった。
「…え、」
左側には山、右側には住宅地。
どういうことなのか聞きたかったけど、父さんはさっさと歩いて行ってしまう。
あわてて追い掛ければ、ふっと山の方に一匹、猫がいた。
「可愛い…!」
三毛猫みたいにぶちがある猫で、不思議なことに御稲荷様の狐様みたいな縄を背中にかけている。
不思議な容貌も相まって、写メるべく携帯を構えた、その時。
「フシャーッ!!」
すごい勢いで威嚇され、思わずビビる。
ごめんなさい…と心の中で謝る。
…シャイなのかな…。
そんな事を考えていれば、また山の方に同じ格好をした猫。
さっきの子は可愛い感じだったけど、この子は美人さん。
…大人しそうだし、平気かな。
懲りない私はまた携帯を触るけど、やっぱりすごい勢いで威嚇される。
…ダメか…。
そう思いながら二匹の猫を見つめていれば、彼らが見ているのは私じゃないと気付いた。
…じゃあ、なにを?
ゆっくり振り返れば、住宅街に似合わないものが二匹、そこにいた。
豚だ。
猫たちを嘲笑うみたいに鳴いているのを見てぞくりとする。
先を歩いていた父さんに駆け寄り横を見ないようにして歩く。
でも、住宅街の方から一つこっちを見る気配がある。
気になって、恐る恐るそちらをみれば。
「黒い、豚…」
普通の豚の三倍の大きさはあるだろう黒い豚が力なく寝そべったまま、私たちを見ている。
「見るな」
「え?」
父さんは黒い豚から足早に離れると、ぽつりと話しだした。
「あれは富士の御山にいる神の一族の犬だったが、呪いを受けあのように豚の姿になられてしまった」
「じっくり見るとお前にも呪いがかかる」
「猫たちは神使で豚から犬を救おうとしているが…まだ力が足りない」
そんな事を話す父さんは真剣な眼をしていて、茶化すことなんてできなかった。

気が付いたら私たちはバーから出て外を歩いていた。
…あれは、なんだったのだろう。





















という夢を見たんだ。