小説ひとつ、実験的に上げてみる
(過去の遺物です。閲覧注意!)





「…懐かしいね」

ぽつんと、少女が呟いた。微かに茶色がかったストレートの髪が、冷たい風に揺れる。

「…そう、だな」

少女の後ろにいた、青年が同意した。脱色したようなうすい色の短髪は、さらさらとそよいでいる。

「もう、何年ぶりかな?」

10年以上…か」

「…そっか。もうそんなになるんだね」

ふわり、と少女が笑う。

「でも、アキラ。ここは変わらないよね」

「…ああ」

「ほら、ここの木だってさ。秘密基地つくって」

「ああ」

「アキラが落っこちてびーびー泣いてさ」

「悪かったな」

「…でも、アキラ大きくなっちゃったね」

「……ああ」

アキラがうつむいた。少女が、ゆっくりと微笑む。

「アキラ」

「…なんだよ」

「いままで、おぼえててくれて、アリガトウ」

「…サキ?」

「もう、アキラにあたしは必要ないよ」

「え…?」

「あたし、アキラがいたから、さみしくなかったよ」

くるり、とサキがスカートを翻して、アキラから離れた。

「おい、サキ!?」

「アキラはもう一人で歩けるよ。あたし、ずっと、アキラ見てたから、分かるんだ」

「サキ…!」

「…あたしを大切にしてくれて、ありがとう」

「サキッ!!」

アキラがサキに手を伸ばす。だが、その手は空をきった。

いつの間にか、サキが消えていた。

「………馬鹿野郎…!」

悔しげなアキラの声も、冷たい風に巻き込まれて消える。

「…どうして…おいてくんだよ…」

アキラはサキが消えた先を見た。住宅街の中の、小さな公園。

錆びたブランコ、つめたいジャングルジム、のっぽの滑り台。

そして、中央の桜の木。

「………?」

アキラが桜の木に近づく。

「…これ」

腰のあたりに、傷が入っている。その少し下あたりにも、もう一本傷がある。

「せいくらべの、あと…?」

「ああ、そうか」

(…あの日の あなたを 追い越し…)

「俺が、成長したから」

(頭ひとつ突き出した)

「おまえは 帰ったのか」

(不自然な ライン)

〜おやすみ、サキ。 またいつか〜

「今度は、ずっと一緒に…」

 








失礼いたしました!