1月に読んだ本

・約束された場所で underground2/村上春樹
・古代アンデス文明展 図録/国立科学博物館
・特別展ミイラ「永遠の命」を求めて 図録/国立科学博物館


約束された場所で

村上春樹が、オウム真理教の信者にインタビューしたノンフィクション。1998年時点の本なので、死刑執行どころか裁判真っ只中の頃。

なんというかカルト宗教というのは、自殺よりも簡単に、安易にこの世とサヨナラできる方法なんだろうな。大きな組織になると、寮があり、経営してる会社や店があるから仕事もあるし、周りは皆自分と似た、生きづらかった過去がある人達。そこの人達やその環境にいれば、世間と関わらずに生きていける。信者になるだけで、世間一般とは格上の自分になれる。
理解ある仲間と一緒に、やりたいことを好きなだけやるって、まさしく最高の居場所だよね。そのやりたいことっていうのは修行とか教祖の求めること以外結局許されないわけだけど、それでも修行以外興味ないとか、とにかく一般社会に混じりたくないとかいう人達にとっては、居心地が良すぎて抜けられないと思う。

「好きなことして生きていこう」の最たるものがあの当時はオウム真理教だったってことなんだろうな。

1998年の時点で30代だった、ここに載ってた人達。今頃どうしているんだろう。

あと、途中から登場した河合隼雄が、「犯罪はだいたい『良い人』がするものだ」と言っていた。特に戦争。
国を良くしたい志が高くて、学校や組織の言うことをよく聞き、規律を守り、上官に素直に従い、正確に実行するのは『真面目な良い子』だと。だからカルト宗教も、大日本帝国もナチスも、真面目な良い子が出世する。

けれども問題は、後の対処だよ。この本に出てきた信者達も、事件のあと信者だからという理由だけで、顔写真や実名や住所を、新聞や雑誌に晒されて、内定が取り消されたり、「あなたが信者だと知ってたら、取り引きなんかしなかった」と顧客が離れたり、引っ越ししたくても家がなかなか借りれなかったりしたらしい。
それは、洗脳や思考停止とどう違うんだろうな。

コロナもそうだよね。人混みの映像を見て、遊んでる人扱いしたり、デマがバズってトイレットペーパーがことごとく欠品したり。
今年は一体、何が起こるだろう。

古代アンデス文明展

縄文や弥生土器を昔教科書で見たけれど、アンデス文明の土器はそれと比べて色鮮やかでどれも個性的でかわいい。日本の神や仏は美意識の極みって感じたけど、アンデスの神々はどう見てもゆるキャラなんだよな。

アンデス文明は無文字文化なので、当時の人々の価値観や暮らしは、土器のイラストや墓や遺跡の様子から辿るしかないらしい。土器には、生者と死者が交流している様子が描かれてるものもある。顔は死者だけど、生きている時と同じように過ごして、自分で狩りにも行く。
「モチェの人々にとって、死は生命の第一段階にしかすぎず、動いたり話したりすることができなくなっても、生者と共に生き続けると考えていたようだ」

「古代アンデスには貨幣がなく、市場の痕跡もないことから市場での物々交換のシステムもなかった。人々にとって富とは、豊かさとは何だったのだろう。それは、人間関係の多さ、臣民の数、その人を助ける人がどれだけいるかだっただろう。」

オウムの信者の人達は、「日本はもうすぐ破滅する」「こんな世界を、教祖が終わらせてくれると思った」など言っていた。似たようなことは漫画や映画にもよくある。
たけどそういう考えは、古代アンデス民族では全くありえないし、受け入れられない発想なんだろうな。
こういう文化の街や国もある、と知っていたなら、あの時や今、カルトにハマった人達も、もう少し何か変わってたんじゃないかな…とか思う。

ミイラ「永遠の命」を求めて

クレイジージャーニーで日本の即身仏の回があった。京都では、大原に古地谷阿弥陀寺というところが有名らしい。
大原また行きたいなぁ。

国が違えば死生観も葬送のあり方も全然違う。同じ国でも時代が変われば。
子孫繁栄を願ってのミイラだったのに、現代では盗掘と密売のターゲットになってしまってる。
一攫千金を、売る側も買う側も狙ってるから、回り回って盗掘も密売も無くならない。
本当に美術品が好きなら、正しい知識と倫理で接すること。高額で売れるかどうかだけで好き嫌いする骨董趣味は回り回って、関係してるあらゆる国の文化を破壊してる。

前になんでも鑑定団で、自称古生物ヲタクが化石入り琥珀の明らかな偽物(もちろん鑑定結果も偽物)持ってきてドヤってる姿見て、同じヲタクとしてものっっすごいモヤッたけど、モヤった理由がこれでハッキリした。好きなら勉強しろ!!!!!オメーがやってるのはヲタ活動じゃなくてギャンブルだ!!!!!

博物館の「正しい」普及活動は、要る!!!!!だから職員さん達の待遇上げてあげて!!!!!