5月に読んだ本

恐竜博士のめまぐるしくも愉快な日常/真鍋真
廃用身/久坂部羊

恐竜博士
現・国立科学博物館館長の方が書いたエッセイ。
「夢を追って頑張る子どもたちに、もうひとつ伝えたいことがあります。それは、もし苦しくなったらひと休みしてもいいということです。」
「研究は一生続くものです。逆に、おもしろいと思えなくなったら、いったん距離を置く、という決断も必要でしょう。そして、いつかまた興味が出たら、そのとき戻ればいい。」
「もちろん、リタイアしてから戻るのは大変です。研究には、マラソンのようなところがあります。それは、世代を越えた駅伝のようなもので、みんな一斉にスタートしたわけではなく、ゴールが決まっているわけでもありません。」

恐竜博2019で買って、ずっと眠ってた本。
コロナ以来恐竜はご無沙汰だったけど、栞も含めて、大切な一冊になりました。
恐竜博2023は大阪にも巡回するらしく、久々に行ってみたいな。

廃用身

ネタバレ


最遊記のセリフを思い出した。
三蔵「一寸の虫にも五分の魂という言葉を知っているか?」
孫悟空と沙悟「小さい虫にも命はあるってやつだろ?」
三蔵「少し違うな。魂っていうのは命じゃねぇんだ」

たとえ年を取って、耳や目や手足が日に日に不自由になり、見た目が衰え、物忘れするようになったとしても、生きてきた人生があり、誇りがある。それは誰にも踏みにじってはならない。誰にもとは本人である自分自身も含めて。
初版の十数年後に相模原の施設の事件が起こってしまった。
小説のような未来にならないような方向に科学は進んでほしい。

就活の自己分析と他己分析を思い出した。他人から見た自分は、自分が思う自分と違うことがある、と。
だけど自分が思う自分っていうのも、やっぱり大事だと私は思うんだよ。
人は他人との関わりで精神が形成される、とはよく聞くけども、やっぱり他人の目がない時にやってることも、そいつの本質だと思うのよ。
という自分のモヤモヤを、この本を読んでこうして言語化できたわけよ。スッキリ。
あとは、酒の席での振る舞い、ピンチの時の言動はそいつの本当の姿。という、どこで聞いたかも忘れた、先人達の教え。
みんなこの医者に当てはまりますわ。

以下もっとネタバレ

最後の最後に、金田一の気分になったわ。「あんただよ矢倉さん!!」
メディアの過剰報道と誹謗中傷が夫妻を自○に追い込んだ。と見せかけて、この語り部が夫妻を、自○するように仕向けたんだ。
医者が冷静な態度を保っていられたのは、本を出版したかったから。
しかし何度も絶好の機会がありながら、「他メディアに先手を取られて」だのなんだの言って延期に延期を重ねたのは矢倉さん。
夫を自○で亡くした妻にさえ出版を迫ったのも矢倉さん。
いつも見ないワイドショーをなぜか見て、医者妻の自宅周辺が閑散としているのに訪問したのも矢倉さん。
ワイドショーで取り上げられたのにも関わらず、自宅周辺が閑散としていたのは、医者妻が世間から既に飽きられてたからでは。電話に出ないからって、なんでわざわざ会いに行くんだよ。

何よりも、騒動の実態と医者氏の本質について記す、というていだったのに、最終的にはAケアは未来に必要、という締めくくり。
Aケアが未来に必要と書きたかったなら、全患者へのインタビューを箇条書きで書くな。
「遺書がなぜ外部に漏れたのか?」って、警察でも医者妻でもないならお前しかおらんやろ。


医者氏が患者にAケアという素晴らしい施術をほどこし、世に出した。と同じく、矢倉氏は世間に医者一家の人生という素晴らしい本を世に出した。
患者が医者を求めて初めて医者が必要なのであって、医者は患者の人生の主人公ではない。
だから矢倉氏を退職に持って行った向幻社は立派だったわ。
事件があるから記者がいるのであって、書きたいことを書くのは趣旨が違うよねと。

最後に。医者息子、さてはAケアで生きてる?